つくば宇宙フォーラム

第157

銀河系中心領域の特異分子雲に着目したブラックホール探査

竹川 俊也 氏

神奈川大学


要旨
銀河系中心核から半径約200 pc以内の領域はCentral Molecular Zone (CMZ)と呼ばれ,銀河円盤部に比べて高温・高密度かつ乱流が卓越した分子ガスが密集している。CMZには,空間的にはコンパクトでありながらスペクトル線幅が異常に広いHigh Velocity-dispersion Compact Cloud (HVCC)と呼ばれる特異分子雲が数多く存在する。HVCCの起源については,原始星アウトフローや超新星爆発との相互作用,分子雲衝突,そして非活動的な中間質量ブラックホールとの重力相互作用など,複数の可能性が議論されてきた。これまで大半のHVCCは他波長域に対応天体が見られず,そのことが解釈を困難にしてきたが,近年,点状電波源を内包するHVCCを複数発見した。その一部をALMAにより詳細に観測した結果,電波源がradio-loudなブラックホールである可能性が高いことが示唆された。この成果は,HVCCがブラックホールの存在やその活動に起因することを強く支持するものである。本講演では,我々が推進してきたHVCC研究の現状と課題を整理し,HVCCをブラックホール探査の新たな手掛かりとして紹介し,今後の展望について議論したい。


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